コンチネンタルタイヤとヤナセのつながりは長く、両社の密接な関係は1974年7月にスタートしている。そこで今回は、ヤナセオートシステムズの平本光洋氏と松沢芳樹氏がコンチネンタルタイヤ・ジャパン株式会社を訪問し、ナショナルセールスマネージャーメアリー・リー氏、キーアカウントマネジャー浅山文徳氏に創業150年を迎えた同社の歴史からヤナセオートシステムズとの今後について伺ってきた。
■コンチネンタル社とヤナセのつながりについて、教えてください。
浅山:1974年、フォルクスワーゲン・オブ・ノースアメリカの社長を務めていたカール・H・ハーン氏が同社を退任した後、当時のコンチネンタルタイヤ社CEOに就任しました。同社は当時、西ドイツ国内でこそ一流のタイヤメーカーでしたが、世界的な知名度は低く、特に輸出面では遅れを取っていたようです。日本での拡販を進めるために来日したハーンCEOは、ヤナセさんを訪れ、「ヤナセが一手販売元となって欲しい」と要請しました。そのとき、梁瀬次郎社長は、高速道路網の拡充や自動車の発達により、日本でも高速走行時におけるタイヤの安全性や耐久性強化に対する必要性が増すと考えており、コンチネンタルタイヤ社が他社に先駆けてスパイクタイヤに替わる新しいゴム質を持つウィンタータイヤである「コンタクト」を開発したことにも着目していました。そういった経緯から、同じ年の7月に輸入販売契約が締結されることになりました。梁瀬次郎社長とハーンCEOは非常に親しい友人であると共に、ヤナセさんの関連会社でメルセデス・ベンツなどの輸入を手がけていたウエスタン自動車がコンチネンタルタイヤを輸入し、オールヤナセネットワークを通じてメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、アウディ用のタイヤを販売していたそうです。
平本:往時の梁瀬次郎社長は、さまざまなモータリゼーションや海外の良い商品を日本に広めていきたいという意思があり、コンチネンタルタイヤを日本に導入しようという想いが非常に強かったのだと思います。
■創業から今日までのコンチネンタル社の歴史と特徴について、教えてください。
メアリー:コンチネンタルタイヤは今年150周年(※取材時2021年)を迎え、特別な年となっています。そのパイオニア精神でタイヤ業界のスタンダードを構築し、画期的な発明によって、タイヤをより安全かつ効率的で、持続可能なものにしてきた150年のうち50年近くをヤナセさんと築いてきました。ヤナセさんはコンチネンタルタイヤと同じように、タイヤや安全を考えてきたパイオニア的存在で、そういったところが両社の関係において合致している部分だと思います。コンチネンタルタイヤは、ガソリン自動車が発明される15年も前から自転車や馬車用タイヤを造っており、その後も、世界で初めてトレッドにパターンを採用した自動車用タイヤや、世界に先駆けて環境に配慮したタイヤ「ContiEcoContact」、未来のモビリティのためのインテリジェント・タイヤの開発、また持続可能な資源の確保を目指したタイヤの主要な原材料である天然ゴムをタンポポからつくる研究など、常にモビリティの限界を押し広げ、革新的で安全かつ持続可能な製品を開発してきました。グローバル戦略品と呼んでいる純正装着タイヤには多くのコストをかけていて、アメリカやアジアなど、環境が違うと求めるものは異なるので、その土地ごとの違いやユーザーの好みを反映しながら開発しています。研究開発センターやテストコースがある一番大きい施設はドイツに存在していますが、アジアではマレーシアなどエリアごとに施設があり、グローバルチームとして働いています。地域性の他に環境も考慮していて、以前は、夏はサマータイヤ、冬はウィンタータイヤでしたが、現在ではオールシーズンタイヤのニーズが高まっています。コンチネンタルタイヤが、さまざまな条件に合わせてタイヤを開発していることがお分かりいただけると思います。
松沢:タイヤの履き換え作業が大変で、取り外したタイヤの置き場が無くて困っている、できれば一つのタイヤで走りたい、という声があるので、オールシーズンタイヤのニーズは確実にあり、実際ここ数年で認知度が高まっています。そういったことでお困りのお客さまにはオールシーズンタイヤを提案し、納得した上でご購入いただくのが基本となります。
■ヤナセオートシステムズとの関係について、教えてください。
平本:ヤナセが部品の卸売事業を強化するため、ヤナセオートシステムズの前身であるヤナセオートパーツを分社化しました。その後、外販専門のエリアセンターを全国に開設し、部品と共に高品質で競争力に優れたタイヤも販売していこうと。ヤナセネットワーク向けに今まで培ってきたコンチネンタルタイヤの商品知識と販売スキルを活かし、輸入車のポテンシャルを引き出すことができ、お客さまに満足いただける、同社の外販向けシリーズを積極的に売っていきたいという経緯があります。ディーラーには入ってこないクルマに対し、私どもは整備工場さんとか、中古車販売店さんを通じて輸入車ユーザーさまに、コンチネンタルタイヤをお届けしているということになります。お客さまのニーズとしてはやはり、コストパフォーマンスを意識され、かつヨーロッパ生まれの高い剛性感とスポーティなドライビングフィールを求められる方が圧倒的に多いです。その意向にマッチしたタイヤということで、現在ExtremeContact DWS06 PLUS積極的に外販しています。タイヤの外販は2017年くらいから行っていますが、それ以降、外販市場でも輸入車ユーザー向けにコンチネンタルタイヤをおすすめする機会が確実に広まっています。
浅山:ExtremeContact DWSが先代モデルから「06」に変更されるぐらいのタイミングでYASでの外販が始まり、我々が純正装着タイヤ(以下OEタイヤ)だけではなく、さまざまな需要に対応できる製品をラインアップしていこう、というタイミングと見事にマッチしました。コンチネンタルタイヤは高価だと思われていますが、ExtremeContact DWS06シリーズはリーズナブルな価格なので、ユーザーの満足度が高く、OEタイヤサイズから、ドレスアップ、インチアップサイズのタイヤまで幅広くラインアップしています。
平本:DWS06シリーズは大人気で、その中でもExtremeContact DWS06 PLUSの注目度は非常に高く、お客さまからの評判もいいので、外販の問合わせも多いです。ExtremeContact DWS06 PLUSを外販の主力のタイヤとして盛り上げていますが、コンチネンタルタイヤのカタログに載っているタイヤはすべて取り扱っています。タイヤに関するさまざまなご質問にも、各エリアセンターを通じて適切なアドバイスをさせていただいておりますので、お気軽にお問合わせください。
■日本のタイヤメーカーがある中で、どうやってヨーロッパブランドのタイヤであるコンチネンタルタイヤが認知されるようになり、知名度を上げていったと思いますか?
メアリー:もともとドイツ車をはじめとする輸入車オーナーの間では一定の認知度がありましたが、ここ数年で認知度が上がっていった理由としては、輸入車メーカーの車種拡大により、国産車から輸入車へ乗り換えるユーザーが増えていたり、日本法人を立ち上げたことにより、ディーラーでの販売に加えて量販店等でコンチネンタルタイヤのお取り扱いをしていただいたりと販路が拡大していったからだと思います。
浅山:スタンダードなモデルには供給面で難しい部分があったりしますが、ホンダ NSXやシビック Type Rなど、少し限られた国産車のトップエンドモデルに採用され始めている点も知名度を上げることに貢献していると思います。各自動車メーカーがこだわって作ったモデルなので、タイヤにもこだわった結果としてコンチネンタルタイヤを選んでいただいた、と思っていますので、そういうところからも我々は国産車ユーザーに対してもアピールをしています。
メアリー:そもそも日本車への装着が無いと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、以前から国産車メーカーとの付き合いはありました。海外向けの日本車や海外生産の日本車には装着されていることも多く、前述の車種に加えて、トヨタのヤリスや日産X-TRAILなどにも純正装着されており、これも認知度を高めている1つの要因だと思います。以前、ヤナセさんはフォルクスワーゲン・Golfにコンチネンタルタイヤのステッカーを貼って販売していましたよね。そのステッカーが欲しいというお問合わせが、いまもあります。コンチネンタルタイヤというブランドを見事にプロモーションしてくださったわけです。
松沢:日本向けのGolfは、コンチネンタルタイヤ装着車を選んで輸入してもらっていて、Golf1~3が販売されるくらいまで、選んだクルマたちのリアバンパーにコンチネンタルタイヤのステッカーを貼っていました。そういえば、私が入社した頃に開催された東京モーターショーでは、タイヤや用品を置いたコンチネンタルタイヤ・ブースをヤナセが出していました。
浅山:ちなみに、ヨーロッパで生産される新車の3台に1台は、コンチネンタルタイヤを装着して工場から出荷されています。