YAS Person | Interview

  • TOP
  • YAS Person
  • 02 最先端の修理技術―メカニックたちのこだわり
02 最先端の修理技術―メカニックたちのこだわり

認定工場で修理をするということ。

アウディ認定アルミ溶接メカニック 伊藤健次郎
アウディ認定アルミ溶接メカニック 伊藤健次郎

伊藤:先ほど話にあったように外見だけなら、同じような修理ができるかもしれないですが、それでは、メーカーが定めた強度に戻すことはできません。安全の面で、100%完全に修理できています、とは言えないですね。メーカーによってはあえて車をぶつけ、修理する前後で車体が同じようにへこむか、正しいタイミングでエアバッグは開いているか、という事故検証を行っているところもあるほどです。その基準に基づいたマニュアルがあるので、それに従って作業し、初めてちゃんと修理ができたと言えるのでしょう。

倉又:しかも、どの認定工場であっても、ドイツで技術習得した私たちしか作業にあたれません。たとえば、同じ納期で2台入ってしまったりすると対応できないので、そこは納期を調整していただくほど徹底しています。

伊藤:そうですね。各工場に2人ずつくらい有資格者がいます。後輩たちに実際に作業はさせられませんが、使い方など今後のために教えることもあります。彼らも興味を持って聞いてきますね。今後、彼らが試験を受けて資格を取り、YASの各工場に技術を持つ者が増えるのでしょう。

メーカーテスター
メーカーテスター

石田:あと、日本とドイツでは電圧が違うので、機械のセッティングが微妙に異なります。ですから、我々はドイツでの研修後に日本でもJIS取得のための研修を受けています。JISの座学で、ドイツでの講義への理解がより深まりましたね。JIS取得後もこれを継続するために、実務就労の証明が半年に一回必要で、技術試験も3年に1回あります。更新とはいえ、再度同じような試験を受け直すようなものなので大変です。

倉又:常に溶接作業をしていないと。いきなり3年後に更新試験だよ、と言われてもできないレベルですからね。

高度な技術が求められるアルミ溶接について。

アルミ溶接機
アルミ溶接機

伊藤:アウディがボディに使用しているアルミの作業は、鉄と比べてかなり難しい。アルミ溶接の場合、接着剤の付け方、鉄板の表面の処理の仕方など細かい部分が決まっているので、特に手間がかかります。

石田:そうですね。鉄は1100~1200度、アルミは660度と、溶ける温度も全然違うので、性質がまったく違います。鉄は溶接の温度が高いので、多少の不純物は燃えてしまうし、難しくありません。一方、アルミの場合は気泡が入ってしまったりする。

倉又:溶接のとき、スパークする火花にも差がありますし。鉄は溶接している先を凝視しなくてもつきますが、アルミの場合は常に見て、どのくらい溶けているのか、穴があきそうか、などかなり集中して意識しないと完成しないです。 アルミ溶接については、いくらいい機械を導入しても、腕がないと扱えないですし。ちょっとした手の動きなどで仕上がりが変わってきますので。

アウディAG研修
アウディAG研修

石田:あと、溶接機のセッティングにも時間がかかります。各自、溶接のやり方には癖があるのですが、それに機械の設定を合わせなくてはいけないので。

アウディAG研修
アウディAG研修

倉又:ドイツ研修では車の下に入って、上向きで溶接をしたり、色々な角度で作業したり、厚みや材質の違うものを接着したり何度も同じことを行いました。講師がまずお手本を見せてくれ、さも簡単そうにやっているように見えるけれど、いざ試すとそれほどうまくできない。
見た目がきれいに溶接されているだけではだめなので、溶接した部分を切断して毎回その面を見るんです。断面に気泡がないか、裏までしっかりくっついているかなどを毎回チェックされるのです。

伊藤:研修最終日の試験では30cm幅のものを溶接して、短冊に切ってその中の何枚かを割って断面を見ました。溶接しても、割ってみないと出来がわからないですから。部分的にできていてもだめです。4枚作ったら4枚全てできていないと試験にはパスできない。厳しい基準が設けられていましたね。

Page Top